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静岡県における「子どもの頃からの生活習慣病予防」 土屋厚子
はじめに
●取り組みの背景となった県の課題
静岡県(以下,本県)は,人口376万人,日本のほぼ中央に位置している。第2次産業を中心に,農業や漁業などの第1次産業,観光などの第3次産業も盛んである。65歳以上人口は27.8%(2014〔平成26〕年)となっている。2012(平成24)年6月に厚生労働省が初めて公表した都道府県別の「健康寿命」において,男性2位,女性1位,男女総合1位(本県試算)となり,その後第3回までの平均値でもトップクラスである。
しかし,健康寿命と平均寿命との差を見ると,男性で約8年,女性で約11年あり,これは健康上の問題で日常生活に支障がある期間となる。この差をできる限り短くしていくことが行政としての重要な課題である。県民の健康寿命延伸のため,行政だけでなく,企業,団体も巻き込んだ県民総ぐるみの健康づくり対策が必要であり,人口の約7割という「無関心層」も自然と健康づくりに取り組めるような環境整備が必要である。
調査では,県民の死因の約5割が生活習慣病(がん,心臓病,脳血管疾患)であり,また,子ども世代と働き盛り世代に「健康上の理由で仕事や家事に影響がある」割合が多くなっていた。子どもに関しては朝食を一人で食べる割合が約3割(小学6年生)という現状もあった。
●しずおか“まるごと”健康経営プロジェクト
そこで,2017(平成29)年度からは,健康経営*1の視点を取り入れた,県民総掛かりによる戦略的な健康づくりを行うことを目的に,「静岡県で暮らす,働く,育つと元気になれる」をコンセプトとした「しずおか“まるごと”健康経営プロジェクト」(以下,健康経営プロジェクト)を開始した(図1)。現在,「働き盛り世代」と「子ども世代」へのアプローチという2本柱で対策を進めている。
働き盛り世代への対策としては,企業の健康づくりを応援するための情報発信や,地域住民に健康情報を伝える「健幸アンバサダー」の養成,優良事業所の表彰,事業所ネットワーク会議の立ち上げなどを行い,健康経営にこれから取り組む,あるいはすでに取り組んでいる企業を支援している。
さらに,子ども世代へのアプローチとして,健康づくり意識の醸成を図るため,「子どもの頃からの生活習慣病予防」という視点を取り入れた子ども向けの啓発媒体を作成し,これを用いた学校での出前授業を実施している。
以下では,この「子どもの頃からの生活習慣病予防」について,取り組みの概要や実績,今後の展開等について報告する。
静岡県は2017(平成29)年から「しずおか“まるごと”健康経営プロジェクト推進事業」として,健康経営の視点を取り入れた職場における健康づくりの支援や,子どもの頃からの生活習慣病予防の学習支援などを実施している。本欄ではこのうち,東京大学未来ビジョン研究センターと実施した,子どもを対象にした出前授業の取り組みを中心に紹介する。
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