連載 ナカイタ発 保健師へのつぶやき・68
最近の気掛かり—子ども虐待防止・予防活動のベクトルは
中板 育美
1
1武蔵野大学
pp.153
発行日 2019年2月10日
Published Date 2019/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201124
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目黒区の女児虐待死亡事例を受けた児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議を経て,決定された「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(2018〔平成30〕年7月20日)には,❶転居事例の児童相談所間・自治体間における情報共有の徹底,❷子どもの安全確認ができない場合の対応の徹底,❸児童相談所と警察の情報共有の強化,❹子どもの安全確保を最優先とした適切な一時保護や施設入所等の措置の実施,解除,❺乳幼児健診未受診者,未就園児,不就学児等の緊急把握の実施,❻「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」の策定の6点が,緊急に実施する重点対策として示されています。
中でも❸児童相談所と警察の情報共有の強化については,当初「全件の情報共有の全国ルール化」により警察官が介入して保護者に警告を与えることで重大事件を防ぐという案で議論がなされていました。その後,日本子ども虐待防止学会(JaSPCAN)は,一律の全件共有のルール化は保護者からの相談や関係者・機関の虐待通告の抑止につながる可能性があるため,情報共有の必要性が高い場合に限るべきだとして厚労大臣に要請していました(2018年7月13日)。一律から一定の条件が加わり,拙速に事が運ぶことにはならず,とりあえず安堵です。
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