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公衆衛生活動としてのポジティブ心理学介入の可能性―福島の子どもたちのレジリエンスをめざして
島井 哲志
1
,
大久保 亮
2
,
氏家 達夫
2,3
,
筒井 雄二
3,4
1関西福祉科学大学心理科学部
2名古屋大学大学院教育発達科学研究科
3福島大学災害心理研究所
4福島大学共生システム理工学類
pp.746-750
発行日 2016年9月10日
Published Date 2016/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200520
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災害という経験
「忘れないでほしい」という声が熊本地震(2016年4月発生)の被災地から届く時期になった。しかし,そのことを,いま最も切実に感じているのはおそらく2011年3月に発生した原子力発電所事故(以下,原発事故)を経験した福島県の人たちだろう。この「忘れないでほしい」という願いは,実は,みんなが忘れないことで満たされるわけではない。それは,失われてしまった世界との統一感を取り戻したいという,「満たすことが難しい願い」を含んでいるからである。
私たちは,世界には秩序があり,何らかの意味があるものであり,自分もささやかながらそこにつながっていると感じている。私たちの生きがいや働きがいもそこから生まれる。直接的なつながりを強く感じるのは,人によって,家族であったり,職場であったり,地域であったり,国家や民族であったり,あるいは,もっと広く人間というものかもしれない。それがさまざまであることにも意味があるだろう。
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