連載 作業療法を深める・第58回
ポジティブ心理学と作業療法
島井 哲志
1
,
津山 みちよ
1
Satoshi Shimai
1
,
Michiyo Tsuyama
1
1関西福祉科学大学心理科学部
pp.1276-1281
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202737
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はじめに
ポジティブ心理学は,ペンシルヴァニア大学のマーティン・セリグマン(Martin Seligman)によって提唱され,実質的に21世紀にスタートした心理学の学問的運動である1,2).心理学では最近の領域でもあり,まだまだ十分には知られていないが,この20年の間に各種のハンドブックも数多く出版され,国際専門学術誌も刊行され,国際学会も定期開催されるようになり,このキーワードでヒットする論文は年間400編を超えている3).
ポジティブ心理学は,心理学全体に対する学問的運動でもあり,ポジティブ心理学の研究と特定されていなくても,臨床心理学,感情心理学,社会心理学,教育心理学等をはじめ,さまざまな心理学領域で心のポジティブな働きの研究が増加している.学際的な活動も盛んに行われており,精神医学や看護学等の保健医療の領域でも広く展開されている4,5).さらに,学校教育,経営学,情報科学や倫理学といった領域にも展開されており,極めて活発な研究実践領域といえる6〜8).
そこで,ここでは,はじめにポジティブ心理学とはどういうものなのかを,そこで取り上げられてきたテーマや知見とともに簡単に紹介したい.そして,その後,ポジティブ心理学が医療領域にどのように応用されているのか,そして,その一つとしての作業療法ではどのような応用の可能性があるのかについて考えていくことにしたいと思う.
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