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はじめに
少子高齢化が問題視されるようになって久しく,わが国では高齢者の健康寿命の延伸に向け介護予防対策が急務となっている。その対策の要となる介護保険制度では,近い将来介護サービスを利用する可能性がある高齢者に対する二次予防事業として,運動機能の向上,栄養改善,口腔機能の向上,閉じこもり予防・支援をあげている1)。
2012(平成24)年度より,岡山県美咲町では,モデル地区として選定した地区で二次予防事業「コロバン公民館」(以下,二次予防事業)を開催してきた。
美咲町は,人口1万5589人,高齢化率36.9%(2014[平成26年]4月1日現在),出生率5.3‰(2013[平成25]年度)と全国に比べても少子高齢化が著しく進んだ町である。また,大部分が山林を占める農山村地域であり,以前は農業や林業を中心とする第1次産業が中心であった。しかし,主要な市街地が通勤圏ということもあり,町外で勤務するサラリーマンとなる若者が増え,1990(平成2)年から2010(平成22)年にかけて,第1次,2次産業の割合が下降し,第3次産業が発展してきたという状況にある。そのため,それまで農業・林業を通じて培われた地域の住民同士の絆が弱まり,とくに世代間の交流が弱まってきたと感じられるようになった。このような状況は,虚弱な高齢者の閉じこもりなどを助長する可能性がある。
このような背景を受け,二次予防事業は,75歳以上の後期高齢者を対象に下肢筋力の向上を目的とした町独自の体操「コロバン体操」などを通じて介護予防の取り組みを習慣化し,将来的に介護保険利用期間を短縮することを目的としている。当該事業参加者は,教室終了後も転倒予防を目的とした下肢筋力を向上させるコロバン体操の取り組みを,サロンなど自主的なグループで積極的に継続している。
一方,二次予防事業に参加していない住民については,身体的・精神的状況,社会的交流状況,ニーズなどについて状況把握できておらず,支援の必要性を検討することが困難である。社会との交流頻度の低下は,閉じこもりへとつながる可能性がある。よって,介護予防教室に参加していない住民の生活の実態を把握し,地域で生活していくうえでの問題,課題を整理することが必要である。
以上を背景とし,本調査では二次予防事業に参加しない対象者の参加しない理由と生活実態を明らかにし,支援すべき潜在ニーズを検討することを目的とした。
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