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はじめに
2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災により宮城県石巻市は甚大な被害を受け,2015(平成27)年1月時点でもなお1万2585人(5812戸)もの住民が応急仮設住宅での生活を余儀なくされている1)。これは,石巻市の人口約15万人の1割弱に相当する。
仮設住宅での生活は,物理的かつ社会的に行動範囲を狭小化させ,身体面と精神面のいずれの健康状態にも悪影響を及ぼしかねない。とくに男性において注意すべき健康問題に,孤独死とアルコール依存がある2)。
阪神淡路大震災後の応急仮設住宅で孤独死が確認された217人のうち151人(69.6%)が男性であった2)。さらに,死因が肝疾患であった45人のうち42人(93.3%)は男性であり,その67.7%がアルコール性であった2)。
同震災後の仮設住宅で飲酒量が増加した男性の特徴を検証した報告3)では,「毎日の楽しみがない」「外出することが少ない」「近所との付き合いが少ない」など,いわゆる社会から孤立した状況にある者の割合が高かった。
石巻市の仮設住宅においても,入居が始まり間もなくして同様の問題が見受けられるようになっていた。この状況を改善すべく講じた一手が,石巻市,宮城県看護協会,訪問支援員らが主催して開催した男性限定健康教室「大橋メンズクラブ」であった。
地域で健康教室を開催すると,男性参加者がきわめて少ない,もしくはゼロであるというケースは珍しくない。そこで,はじめから対象者と活動内容を男性向けに限定することで,男性の興味を惹きつけやすくする,女性との交流が苦手な男性でも参加しやすくなるなどのメリットが生じると主催者らは考えた。さらに,主催者側にとっても,男性特有の問題に効率的にアプローチできる利点もある。
筆者らはこの活動の運動面の支援者として携わり,運動指導を行うとともに,測定評価を大いに活用した支援(以下,本支援)を試みた。男性は,論理的な思考が得意な者が多いとされるため4),データをもとに自身で納得することで,クラブ参加や運動への意欲が増進されると考えた。そこで,クラブ活動を通して変化が期待される体組成,下肢筋機能,ならびに毎日の歩数の評価を行った。
本稿では,その取り組みについて報告するとともに,本支援が男性参加者の身体的特徴および運動意欲や習慣にいかなる効果をもたらしたのかをまとめた。
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