連載 『保健婦雑誌』に見る戦後史・4
寄生虫たちの時代
木村 哲也
pp.636-637
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101921
- 有料閲覧
- 文献概要
■寄生虫たちの1950年代
かつて「寄生虫病予防法」という法律があった。1932(昭和7)年施行,1994(平成6)年廃止。予防の対象とされたのは,回虫,十二指腸虫,日本住血吸虫,肝ジストマである。いまとなっては,私たちの生活からすっかり縁遠くなったものばかりだ。
こんな経験がある。民俗調査などで昔のお話をうかがっている折,なんの気なしに寄生虫の話題となり,こちらはもっと話が聞きたいのに,露骨に嫌な顔をされきっぱりとその話題を拒否されてしまったのである。すっかり過去のこととして平気で口にできる私たちと違って,おおよそ1950年代までに学齢に達していた世代にとって,寄生虫とは,身体的なリアリティをともなって思い出される忌まわしいものであるようなのだ。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.