調査報告
介護予防事業参加者の服薬アドヒアランスと軽度認知障害スクリーニング指標(STMS-J)との関連
根本 博代
1
,
加藤 貴彦
1
,
西阪 和子
2
,
東 清巳
2
,
日浦 瑞枝
2
1熊本大学大学院生命科学研究部環境社会医学部門公衆衛生・医療科学分野
2熊本大学大学院生命科学研究部環境社会医学部門地域看護学分野
pp.510-517
発行日 2012年6月10日
Published Date 2012/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101891
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■要旨
多くの地域高齢者は服薬の自己管理を委ねられているが,服薬に影響する認知機能面の評価は十分とは言えず,多剤服用のうえ,薬効や副作用に対する理解は低いと考えられる。そこで,本研究では介護予防事業参加者のうち,服薬中の65歳以上の高齢女性を対象に,認知機能および服薬行動・管理の実態とその関連を明らかにすることを目的とした。
調査は,戸別訪問により服薬状況,薬剤理解の程度と残薬の確認,認知機能は軽度認知障害(MCI)のスクリーニング指標である「the Short Test of Mental Status」の日本語版(STMS-J)を用い,これらの実態および関連性について検討した。その結果,薬剤数平均6.1±2.7種類,用量用法や効能効果の知識率は60%以上,薬剤名や副作用は10%未満であった。また,服薬忘れのある者は50.0%,服薬率80%未満の割合は53.8%であった。残薬がある者の服薬率は有意に低く,薬剤数の増加と用量用法の知識率の低下に相関がみられ,MCI疑い群は65.1%であり,健常群に比べ有意に薬剤名や効能効果の知識率が低かった。高齢になるほど効能効果の知識率および認知機能の低下がみられた。
以上のことから,服薬管理には,年齢や薬剤数,薬剤知識,認知機能が関与し,とくに,MCIレベルは薬剤知識の理解の段階で関連していることが明らかになった。さらに,生活リズムと適合しない服薬計画やハイリスクな薬剤の自己調整,薬剤の紛失など,多くの課題が明らかとなった。
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