連載 町で暮らし人と出会う・12
食の安全ということば
森 まゆみ
pp.1134-1135
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101764
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私は5月1日の東京新聞で,東京電力福島第1原子力発電所の未曾有の事故について,「だれもがフクシマ人となった」と言った。チェルノブイリ事故の後にベラルーシの作家アレクシェーヴィッチは「チェルノブイリ人」という言葉をつくった。その近くで生まれた少年の,甲状腺がんの不安と闘いながら「もう隠れるところはない。ならば勇気を持って立ち向かわなければ」という言葉に感銘を受けたから。
「隠れる場所などない。自分だけ逃げられる,安全な食べ物を食べられると思うのは幻想だ」と私も新聞に語った。この事故を防げなかったすべての日本人がこの事態を引き受けるしかないと(これは原発を推進してきた政治家,官僚,電力会社幹部と御用学者を免責するものでは決してない)。福島県人と連帯して,何が一番いいかを探っていくしかないと。
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