連載 「健康格差社会」への処方箋・7
社会保障は経済を停滞させる?―事実か仮説か
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.364-369
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100658
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社会経済階層が高くても低くても,同じ人権をもっており,生物学的にも同じヒトである。それにもかかわらず,一部の人たちの健康が損なわれている「健康格差」がある。このことは,生物学的には「避けられる死(avoidable death)」が,社会のなかにあることを意味する。
公衆衛生学の立場から見れば,それを避けるために,たとえ介入効果までは実証されていなくても,良さそうなことを試みるべきであろう。したがって,本連載の後半では,社会保障制度の拡充をはじめとする対策(処方箋)を示す。しかし,その前にもう1つ検討しておくべきことがある。
それは社会保障制度の拡充による「副作用」である。世の中,立場が違うと意見も違う。経済成長を重視する立場から見ると,「生活保障があるために怠惰になったり…(中略)経済活力の停滞は避けられない」という1)。社会保障の拡充は「予見できる副作用」が大きいので,水準が低いほど良いのだろうか。多面的に検討してみたい。
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