特集 これからの生活習慣病対策
―生活習慣病対策のエビデンス②―保健指導によって集団はどう変わるか?―疫学的視点からのアプローチ
栗山 進一
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1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野
pp.808-813
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100319
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「エビデンスにもとづく保健指導」が課題とされているが,エビデンスは実際にどの程度まで明らかになっているのだろうか。過去の研究を紐解いて,概要をおさえておこう。
個人の生活習慣を変えるのは難しい。たとえば,診療現場における介入の効果について,2004年に米国USPSTF(US Preventive Service Task Force)が「予防医学実践ガイドライン」を公表し,そのなかで喫煙,飲酒,食事,運動,肥満のそれぞれに関する介入効果について文献の包括的なレビューを行った結果,喫煙においてのみ唯一有効性を示す十分な科学的根拠が存在すると結論付けている1)。これは医療現場での話であるが,個別健康教育や地域集団に対する介入でも,必ずしも多くのケースで一定の効果が疫学的に確認されているわけではない。
ある集団の生活習慣を改善する場合,大きく分けて2つの手法があり,それぞれ,ハイリスク・アプローチとポピュレーション・アプローチとよばれている(表1)。前者はスクリーニングなどによって集団のなかからハイリスク者を同定し,保健指導を集中的に行う手法である。母集団に占めるハイリスク者の頻度が一般的には多くないため,ハイリスク・アプローチは集団全体の疾病発症者数の減少にはあまり有効ではない可能性がある。一方,ポピュレーション・アプローチは,対象を一部に限定せずに,集団全体へ予防を行う手法である。実際の疾病発症者数はハイリスクでない人たちからも多くみられるため,集団全体の疾病頻度を減少させるためには,ポピュレーション・アプローチのほうが有効であるといわれている。
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