- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
メタボリックシンドロームの予防には,保健指導が鍵になる。対象者の行動変容を促すには,指導者が予防の意義を十分におさえておくことが説得力につながる。保健指導によって行動変容につながった結果,体のなかでどのような変化がおこるのだろうか…。
“メタボリックシンドローム”で変わる保健指導
糖尿病,高脂血症,高血圧などの発症に肥満が大きな役割を果たしていることは,古くから周知の事実とされてきましたが,近年これらのリスクの蓄積によって,動脈硬化性疾患の発症が高まることが注目され,内臓脂肪症候群(松澤,1987),syndrome X(Reaven,1988),死の四重奏(Kaplan,1989),インスリン抵抗性症候群(DeFronzo,1991)などの概念が次々に提唱されました1)。1999年にWHOがこれらの概念をメタボリックシンドロームとして一括し,さらに2002年NCEP-ATP III(National Cholesterol Educational Program,Adult Treatment Panel III)の診断基準では,体重でなくウエスト周囲径(男性102cm,女性88cm)が採用され,内臓脂肪蓄積の程度以上に,分布が重要視されるようになりました。
この流れを受け,わが国では2005年4月に,内科系8学会により合同で,メタボリックシンドロームの診断基準2)がまとめられました(図1)。最も注目すべきは,内臓脂肪蓄積の指標として,ウエスト周囲径が採用された点でしょう。男性85cm,女性90cmという基準自体には,まだ専門家の間でも議論がなされていますが3~5),内臓脂肪の蓄積を通じて,ライフスタイルから動脈硬化までの一連の流れを明快に示した点が画期的です。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.