連載 ニュースウォーク・96
人口減社会,足早に
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.256-257
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100066
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朝の通勤電車を待つ横浜市内のJR駅ホームに,おなかの大きかったあの女性が見えなくなったことに気づいたのは年明けである。きっと出産したのだと思い,人口減時代に頼もしい限りだと胸中でお祝い申し上げた。それにしても情けないのは,この何か月間,おなかが膨らんでいく彼女に一度として席を譲らなかった「優先席」の通勤者である。
東京へ週3日の通勤。乗る時間も車両も,そのドアも決まっている。「優先席」のあるドアで,いつからかおなかの目立ち始めたある女性が並ぶようになった。電車はほぼ満員。彼女を見て席を譲る人を見たことは一度もなかった。私は2つ目の駅で乗り換えるのでその後はわからないが,彼女もあきらめて初めからドアの手すりにつかまるようになった。
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