特集 症例研究とその指導
—学生のレポート—妊娠の不安とその指導のあり方
岡本 英子
1
,
佐々木 正子
1
1関東逓信病院高看学院
pp.28-32
発行日 1965年8月1日
Published Date 1965/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908820
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I.調査の目的
妊娠した婦人の妊娠性変化は分娩産褥における諸現象として,合目的的な身体的変化が起こってきます。しかしこのような現象に伴って,妊婦の精神生活の面においても多かれ少なかれ種々の変化が当然起こってきます。現在妊婦の保健指導,母親学級において妊娠,分娩,産褥中の摂生法とか生まれてきた赤ちゃんの育児についての知識,正しい取り扱い方を教え、出産,育児に対する準備を整えさせようとすべき指導が行なわれています。しかし私たちは,妊婦が出産という大切な時期を目の前にして,何を考え何に不安を感じて大切な時期を逸していはしまいかを知る必要があるのではないでしょうか。たとえば妊婦が不幸にもある種の懸念や恐怖が解決されず日夜その問題で悩むとしたら,日常生活は非妊時にも増して不規則乱脈の度を増し,不摂生となり,食欲の不振がおこり,さらに身体の倦怠感や腹部に対する諸種の異常感となって現われ,ひいては,これにこだわり,その結果家族との間に争いをかもしだすことになります。このようなことから妊婦の不快感情は分娩終了まで続くこともあれば,産褥以後まで,尾を引くことになりかねません。
したがって,不安な毎日を過している妊婦に対しては,その不安を除去し,心身ともに安心した状態で分娩に臨ませるべきでしょう。ましてや現代のような複雑な世の中においては,妊婦心理を把握しての指導がいかに大切であるかはわれわれの知るところでありましょう。
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