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思春期前期の青年への治療的接近—不登校症例を通して
澤田 愛子
1
1三重県立看護短期大学
pp.832-839
発行日 1982年12月25日
Published Date 1982/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907763
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はじめに
思春期は児童期から成人期へと移行する時期であり,身体的・心理的・社会的に急速な発達を遂げる時でもある.この時期に,青年は幼児期の愛情対象としての両親より分離し,自我同一性を確立して,社会人として出発するための準備をしなければならない.しかしながら,この発達目標に到達するまでに,青年の心理的動揺は大きく,合わせてこの時期の社会とのより拡大した接触が,様々な重荷を青年の肩に負わせることになる.
特に現代,青年を取りまく社会状況にはたいへん厳しいものがあり,登校拒否や家庭内暴力などの問題現象が広く社会の関心を集めている.しかし,こうした青年たちの示す行動異常に対して,周囲の者がただ興味本位に騒ぐのみであれば,事態はなかなか打開されてはいかないであろう.青年を取りまく状況が厳しければ厳しいほど,事態を冷静に見つめ,背後にある問題をよく検討していかなければならない.そして,何よりも青年の声に耳を傾ける必要があるのである.こうしてこそはじめて問題解決への糸口は見い出されるであろう.
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