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文章を書く心得
長谷川 泉
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1医学書院
pp.62-63
発行日 1970年12月25日
Published Date 1970/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906407
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ビュッフォンの有名なことばに「文は人なり」というのがある。個性的な文章の特色をたたえたものと解することができるが,このごろは遠意の文ばかり横行して,その人柄がにじみ出た個性的な文章がすくなくなった。淋しいことである。
文章は,小手先の器用さで書けるものではない。日常の観察にはじまって,その人の人間の充実がまず大切である。充実した人間性から流露するものは,おのずから人を感動させる。もちろん,文章を巧みに書く技巧というものはないわけではない。だが,このようなことよりは,日常の生活をよく凝視し,そのなかから素材をつかみ,そしてその感動を的確に表現するようにつとめれば,おのずからよい文章が書ける。
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