寄稿
6ヵ月講習に思う
岩本 保子
1
1厚生年金病院大阪高等看護学院
pp.57
発行日 1969年8月1日
Published Date 1969/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906217
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厚生省主催・看護教育養成講習会に学んで6か月,教育のむずかしさ,教育のすばらしさをいやというほど感じさせられたことは今だかつてなかった。わが学院の学院長いわく,「教育のむずかしさは,専攻する学問の深みに陥って,行けども行けども底に到達しえないことを知るとともに,……云々」と私に対する励ましの手紙の中で教育に対する感想を書きしるしてくださった。本当にその通りだと思う。しかし,私には,看護教育そのものよりも,教育以前の問題に対して,あまりにも障害の多すぎるこの世界に少々の腹立たしさとあせりを感じるこのごろなのである。
教育の理念,新カリキュラムを中心とした講習内容は,汲めども汲めどもつきぬ泉のように無限の知識を私に与えてくれた。そして,目指すべき看護教育の方向づけを私に与えてくれた。「看護」が四つのカテゴリーでもって教育されるように体系づけられ,それをふまえての看護教育は,人間を科学的に看護する能力を要求されるようになってきた。さらに看護が「看護学」として独立し,自他ともに認めあえる学問体系として並び称せられるように,看護の客観的,合理的,普遍妥当性の原理を今後ますます追求してゆかねばならないのであるが,対象が人間という,きわめて複雑な存在ゆえに,その看護的見方の人間解明には努力を要すると思われるのである。
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