教育のひろば
厳と慈
玉岡 忍
1
1共立女子大学
pp.1
発行日 1968年10月1日
Published Date 1968/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906075
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教育という字は会意文字(形と意味との組合せでできている字)であって,まず「教」とは父すなわち鞭を手にもった形で表わされている人が子どもと交わる姿である。これは父親の子どもに対する教えのあり方であって,子どもを厳格にきびしく,鞭打ちながら鍛えていく意味をもっている。次に「育」は,子どもと肉との一緒になった字であり,子どもは逆立ちしている。これは一つには,生れ出る子ども(頭が下になって生れてくる)に肉を与えるつまり食物を与える意味であり,また一説には,子どもを逆さにして表わしたのは親にさからう不肖の子という意味をもたせ,親のいうことをきかない悪い子にもちゃんと食事を与えるものとの意味になる。これはすなわち母親の子どもに対する絶対的愛情—慈愛—を示すものである。
このように,父親としての厳格な鍛錬と,母親としての慈愛とが相まって初めて教育となるのであって,厳だけでも,また厳に過ぎてもいけないし,そうかといって慈に溺れても駄目である。
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