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第51囘總會印象記—(東京慈大)
河田 政一
1
1久留米医科大学
pp.267
発行日 1950年6月20日
Published Date 1950/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200362
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晩春の雨に烟る東京芝の慈大の大講堂で51囘總会は5月3日午前8時より佐藤重一会長の司会の下に開始せられ,定刻既に200に近い会員の姿は時間の進むと共に増加し忽ち500を越える全國の会員によつてさすがの大講堂も空席のない状態になつた.演者は向つて左端に位置して演壇の主なスペースを図表・幻燈等のために有効に使用したり,壁面に掲げられた優雅な題字,季節の盛花,細かいところに行き届いた会場であり,図表受付諸氏の親切ぶりも嬉しいものであつた.先ず午前の部では我科領域に於ける「ヴイールス」研究の発表が木暮氏(三重医大)により行われ次いで大石氏等(東大分院)の酸化纎維素の研究は治療方面の新しい試みであろう.今年は特に聽器機能の問題が豊富のようであつたが,鈴木氏等信大の音叉健聽閾値明示裝置は面白い考えだ.近年聽覚理論で特異な存在となつた恩地氏のiso-loudnesscurveに関連するオーヂオメーターの構想発表,方向聽の研究者北川教授(前大)は音の融合問題に発展せしめた.
岡大高原教授は騒音聽器障碍の受傷性に耳管狹窄なる因子を実驗的に提示した.臨床的重要問題である人工補聽の研究を東大切替教授,神経難聽に於ける結核の重要性を強調する名大後藤教授等相次いで現われる.午後は廣大難波氏の鼓膜張筋の研究から始まり,新大森本氏の脳腫瘍と頭位眼震の研究,次いで人体聽器病理の判定に関する阪大山川教授等の研究は断頭直後の固定液局所注入により死後変化を防止し得るとの有望なる知見は注目さるべきであろう.
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