巻頭言
社会復帰のむずかしさ
桜井 図南男
1
1恵愛会福間病院
pp.1038-1039
発行日 1979年10月15日
Published Date 1979/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202994
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精神分裂病の社会復帰ということがさかんに口にされている。しかし,分裂病の患者はすでに一応社会生活に失敗した人である。それをそのままもとの社会へ戻し,現実の社会生活に押しこんでみても,同じ轍をふむことはわかりきっているようにみえる。そこで,中間施設というものを考える。たとえば,デイ・ケアである。そのなかで,患者に社会復帰に対する態勢を整えさせ,それから社会へ復帰させる。このプロセスは模式的には一応理解できるようである。
社会復帰をさせて,うまくやれるようになるためには,患者自身のほうに現実の社会生活に耐えうるだけの,病前とは違った何らかの変化が起こるか,あるいは患者を受けいれる社会のほうに,今までとは違った受けいれ態勢ができることが必要ではないかと思われる。そういう変化がなければ,結局,もとと同じことになってしまうであろう。そうして,多くのばあい社会の受けいれ態勢をかえるということはなかなかむずかしいから,患者のほうの心構えを変えてゆくということが主眼にならざるを得ない。そうして,このことも実際問題としてかなりむずかしい。
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