教育のひろば
教育における産業革命
沼野 一男
1
1東邦大学
pp.1
発行日 1965年6月1日
Published Date 1965/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905462
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教育における産業革命というコトバを初めて使ったのは,S. L. プレッシイである。彼はすでに1920年代に教授効率の向上と教師の労働軽減のために,簡単なティーチング・マシン(教える機械)を創案している。プレッシイと彼の協力者たちは,この機械を用いていくつかの実験的研究を行ない,ティーチング・マシンが教授効率を高める上で有効であることを実証したが,それによって彼らが夢みていた教育の革命が実現するには至らなかった。しかし,プレッシイの最初の機械から約30年おくれて,B. F. スキンナーが新しい機械とそれを用いての新しい教授法を提唱するに及んで,教育の機械化に対する期待と関心は非常に大きくなった。スキンナーのティーチング・マシンは教育界において,書物の出現以来最も大きな革命であるとさえいわれて,アメリカをはじめ日本やヨーロッパの諸国で盛んに研究されるようになっている。
現在,ティーチング・マシンにはプログラムド・テキストと呼ばれるブック型式のものから,電子計算機を内蔵している高度に機械化されたものまで多くの職種があるが,それらのマシンによって教授方法にもたらされる最も大きな変革は,個別教授が可能になったということである。従来の講義形式の授業では,能力の高い学生は退屈し,能力の低い学生は講義について行けずに脱落してしまうために,教師がいかに努力してもある程度以上に教授の効率を高めることはできなかった。
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