教育のひろば
倫理学
波多野 述麿
1
1東京学芸大学
pp.5
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905410
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わたくしは,某高等看護学院で1年生に倫理学,2年生に社会学を教えている。倫理学は昨年度から新設された科目であるが,社会学は,ことしですでに10年目になる。
10年前にお引受けしたときのことを思い出すと,国家試験にはない科目であるし,学院としては職業的に専門科目ではないのであるから,院長先生はじめ学院の先生方が一般教養科目の重要性についてご理解がなく,またそれが学生の気持ちに反映して不熱心だったら,ご辞退してしまおうというような気持ちが心の隅にあったように思う。ところが,意外といっては甚だ失礼ないいかたになるが,実に大事にしていただいて今日にいたっているのである。教授会の席上などでも少しも除け者の感じを受けたことがないし,それよりもなによりも,一般の規定にはない,倫理学が新設されたということが,学院の先生方の一般教養科目についてのご理解の深さを示すものであろう。わたくしは,すこしもお世辞をいっていない。自分の教える学科が,学生にとって重要でないと思っていたのでは,教える気持ちになれるものではない。また,どうでもいいような気持ちで教える先生の講義を聴いても,学生は得るところがあまりないであろう。
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