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フィクションと素材
長谷川 泉
pp.22
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905241
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水上勉が「オール読物」10月号に推理競作ベスト5の1編として「黒い産室」を書いている。この作品は,作者あてのある女性の手記の形式をとったものである。「私」なるこの女性は東京近県T市の大学病院の看護婦であり,インターンの蓮田先生に暴力でおかされその情婦になっている設定である。
蓮田先生はぼろ儲けのできる産婦人科医になって病院を建てる夢を持っている。その夢を実現するために,T市に偽名で立川産婦人科医院を設立する。「私」を使って診療ははやりだす。そのやり方が問題なのだが,子供の欲しい不妊症の社長婦人に資金を出させ,麻酔分娩の妊婦をごまかして得た新生児を300万円で社長夫人に売りわたし資金を手に入れたというわけである。
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