ひろば
先生「おいしいもの」ばかり与えないで下さい—看護教育に思うこと
中西 睦子
1
1静岡赤十字病院
pp.48
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904335
- 有料閲覧
- 文献概要
食傷気味の専門科目
高校時代に,まがりなりにも新教育を受けて,人間としては未完成でもそれなりの自我をもち,多少なりとも自由に学ぶことの楽しさを知ってはいった学院生活は,少し勝手がちがいました。最初は,聞違いの許されない職業ゆえと,習ったことは一つ残らず覚えなくてはならないとの決意も固く,学課に臨んだのもつかの間でした。次から次へともりたくさんな専門科目,あまりにたくさん覚えなければならないことばかりで過飽和状態になってしまった私の頭は,まず読書欲を追放してしまったようです。最も基本となるべき基礎看護はしだいに最も興味うすのほうに移行して,方法論的に進められてゆくクラスをいつも受身で聞いていたのです。そんな具合でしたから終講のたびに課せられる試験は,いつも前年度の問題の中から確率の高いものを選び出し,それでたいていが成功してしまったのですから,今考えてみますとずい分当てにならない学力だったと思います。でもその時はその時なりに真剣でしたから,どこかで同じ経験をもつ同僚がいたら秘かに共鳴して下さるでしょう。
とに角こんな調子で自発的な勉強というものをしないで通り抜けてしまいましたから,記憶力の弱くなった今では,青春を浪費したとの悔いが残っております。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.