編集デスク・24
芋魚の到来
長谷川 泉
pp.32
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904331
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わが豚児には遠い山口県にペン・フレンドがいる。一度写真を送ってよこしたのを見ると,真黒に日焼けした健康そうな漁村の子供である。ペン・フレンドといっても雑誌で文通がはじまっただけで,年に2,3度の交際らしい。年に1度ぐらいは品物も送られてくる。
漁村の子供らしく,最近たくさんの魚を送ってきた。包装からして干魚の匂いがプンとする。何という魚かは知らないが,干魚にもしあげのよしあしによって,つやが違うこと,あたかも強いすもうの皮膚の張りとつやが違うのと同様である。それにしても,ずいぶんたくさん送って来たものだ。わが食卓を満たしてなおなかなか消化しきれない。おそらく,この干魚は愛すべき素朴な魚村のペン・フレンドがみずからの労力によって,かくも立派な色つやを持った干魚にしたてあげたものであろう。干魚の現物は,無言に,そのことを物語っているようである。
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