教材 マスコミの話・3
マス・コミと私たちの生活
美作 太郎
1
1新評論社
pp.21-25
発行日 1963年1月1日
Published Date 1963/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904316
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ないとさびしい新聞と週刊誌
去る9月の秋分に当たる新聞の休刊日に,「たまに1日くらい新聞を読まずにいるのは,せいせいしてよいものだ」と言った人がいました。その翌朝,東京新聞は早速このような意見は〈逆説〉にすぎないと批評しましたが,じじつ,新聞の休刊日には,なんとなく物足りない想いで朝のひとときを過ごす人のほうが大多数であったことは疑うわけにいきません。新聞は,今日の私たちの生活の中に日常必需品としてはいりこんでいて,平素は格別の感じもなくすんでいますが,たまの休刊日の朝になると,今さらのように新聞の大切さを思い知らされるのです。
また,私の知っているえらい先生の中には,「週刊雑誌はくだらないから読まない」と言い,「ベストセラーなどを追っかけるよりも古典を読め」と忠言してくれる人がいます。それもこれも大いに傾聴すべき意見だとは思いますが,さて実際問題となるとなかなかそうはいかないようです。私たちは往復の電車の中で,あるいは仕事の合い間の小閑に,たとえくだらないとは思っても,一番気やすくて手ごろな週刊誌をとり上げます。仲間のたれそれとの雑談で「面白かった」と吹聴されるベストセラーを自分もひとつ読んでみようという気になるのは,本ぎらいかつむじ曲がりでないかぎり,自然の人情だと思います。
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