諸外国の教育事情
アジア・アフリカ—植民地教育からの脱皮
高倉 翔
1
1大阪学芸大学
pp.40
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904307
- 有料閲覧
- 文献概要
アジア・アフリカ地域は,少数の独立国をのぞいて,ほとんどの地域が,数世紀にわたる植民地支配の下でくるしんできましたが,第二次大戦後,これらの植民地は新生の独立国としてスタートしました。そして,いずれの国も,「教育建設」になみなみならぬ努力をはらっています。それは,文字通り教育建設とよばれるにふさわしく,これから新しく自国の教育制度を,自らの手で作りあげていこうとする努力であり,先進諸国にみられる教育改革とか教育振興とかいう,これまでの教育制度に手を加えていくということと全く事情を異にしています。
アジア・アフリカの諸国には,植民地時代に教育の施設が全くなかったというわけではありません。植民地の教育は,基本的には本国の植民地支配のための政策を反映して,同化主義とか分離主義とかいわれるように,さまざまな方法で教育がおこなわれてきました。しかし,一般にいえることは,本国の植民地支配に都合のよいように,住民を教育することがねらいでした。それは,教育というよりは「かいならし」といった方がよいでしよう。そのために,本国は,実に手のこんだ「かいならし」教育をおこないました。「いうことをきく」住民を作り出せばよいのですから,民衆に高度の教育を与えることは,かえってマイナスになります。植民地の住民を,彼等の社会階層に応じて異なった教育をし,住民相互を反目させて植民地の秩序を維持しようともしました。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.