連載 病床環境理解のための12の課題・5
人間集合と病室空間
課題2:個人空間と患者のテリトリー[後編]
川口 孝泰
1,2
1兵庫県立看護大学
2兵庫県立加古川病院看護部入院環境検討会
pp.748-752
発行日 1995年8月25日
Published Date 1995/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903720
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物的な環境条件とパーソナルスペース
パーソナルスペースは,人間の日常生活における空間行動の特性を解釈するための概念として,心理学,社会学,人類学や地理学,あるいは建築学など多くの分野において応用されてきた.それらの中でも近年,パーソナルスペースについての実験的な取り組みが多く行なわれ始めており,いくつかの興味深い知見が発表されている1,2).特に高橋,西出らが行なってきた「空間における人間集合の研究」の一連の検討は,パーソナルスペースが人間のとる姿勢(立位,椅座位,臥位)や物的な環境条件の違いによって変化していることを,実験的に行なった代表的な研究例であると言える3).つまり彼らは,パーソナルスペースを,対人距離の集合として捉え,いくつかの方向から相手が接近してきた際の,その場の居心地を「このままでよい」から「すぐに離れたい」までの5段階で定量化し,人間の空間行動の特性を解釈するための重要な示唆を行なってきたのである.
そこで筆者は,高橋らの研究を参考に,病室で入院生活を過ごす患者の個人空間の特性を理解するための基礎的な資料を得ることを目的に,ベッド上臥位でのパーソナルスペースの特性について,物的な環境条件(壁の取り囲み条件)を変化させながら実験的な検討を行なった4).
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