特集 生涯人間発達学入門―人間への深い理解と愛情をもった看護者を育てるために
乳児期(0~1歳)
服部 祥子
1
1大阪府立看護大学
pp.601-606
発行日 1998年8月25日
Published Date 1998/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901882
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
基本的信頼感対不信感
乳児期の発達危機
出産という試練
乳児期を語るために,まず出産からはじめたい.出産は生理的現象であって病気ではないし,ことに医学の進歩が出産をより安全で確かなものにしてきたことは事実である.しかしそれでもなお,出産はさまざまな危険と背中合わせの体験である.母の胎内という平和で安全な小宇宙から,自然の摂理に導かれて狭い産道を通りぬけてこの世に送りだされた新生児は,もし出生の瞬間に十分な意識があるなら,耐えがたい恐怖と不安に襲われたことであろう.
古典的な「出産外傷説」を唱えたランク(Rank)は,「出産は子どもが経験する最初の危険であり,個人の生涯を通じての不安の根源を生み出すものとなる.出生の際の不安により,生きている限り,人間は子宮内で保証されていた安全と保護のある状態に戻りたいという無意識的な願望を抱き続ける」と述べ,出産により人間は大きな心理的外傷を受けることを示唆した.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.