特集 公衆衛生の新らしい動き
主題—公衆衛生の新らしい動き
人間と「もの」の関係の再認識—人間工学の立場から
倉田 正一
1
1慶応大学医学部病院管理学教室
pp.670-675
発行日 1966年12月15日
Published Date 1966/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203382
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
エルゴノミクス
応用科学は戦争ごとに飛躍的な発展を示しているが,第2次世界大戦によっても過去にみなかったような大幅な進歩をとげ,宇宙開発の基礎を作りあげたのであった。しかし,ここで重大な問題に遭遇することになった。それは,兵器はただ単に精密で性能が高くても役に立たない。これを人間が使いこなせなくてはいくら優秀な兵器を製作したところでむだだということであった。
戦時中,米国空軍が航空事故を調べたところ,次のようなメーターの読み違いによる近事故例を発見した。その質問調査の内容は次のようなものであった。「非常に暗い夜でした。私はB25に乗っていました。主操縦士に着陸の合図を送った時高度は4,000フィートでした。地上から1,000フィートのところで着陸体勢にはいるとばかり思っていたのですが,彼は私が注意するまで降下をつづけようとしたのです。彼のまちがいは高度計を1,000フィート読違えたことに原因があったのです。このまちがいはひどくばかばかしく思われますが,このようなまちがいを私がみたのは彼がはじめてではないのです。」驚いた当局があらためて調べてみると,熟練した操縦士の約30%がこのような誤りを経験していることが明らかになった。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.