メディカル・ハイライト
人畜共通寄生虫病(Zoonosis)
吉村 裕之
1
1千葉大
pp.58-59
発行日 1968年7月10日
Published Date 1968/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204228
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はじめに
最近家庭にペットとして犬,ネコその他色々な小動物の飼育,愛玩動物の普及がめざましい。動物愛護の面からはなはだよろこぶべき現象ではあろうが,医学,衛生学的観点から全く問題がないとはいえない。すなわちこれらの動物に寄生または付着する病原体が人体に危害を及ぼすことがないかということである。たとえばペットとしての犬に寄生する色々な寄生虫が人間にも感染することがあるのではないかという疑問が生ずる。犬やネコに限ったことではない。人以外の動物に寄生するある種の寄生虫が人体に侵入した場合様々な病害を起因するという根拠が次々に与えられている。
このような家畜を主とした人以外の動物の寄生虫が人にも何らかの形でたとえ一時的にしろ寄生し様々な臨床症状や時に重篤な疾患を起す場合,私共はZoonosis(人畜共通寄生虫病)と呼称している。この問題はたしかにここ10数年ないし数年間の寄生虫病の新しいかつ重要な課題として多くの注目がはらわれつつある。たとえばトキソプラズマ症を原因する原虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)が感染犬より人に感染したと考えられる症例は外国ではいくつかが報告されており,わが国でも報告がある。このようなことは豚のトキソプラズマ症との関係においても,さらに重要であり,食品衛生上重要であることはよく知られている。
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