連載 病原微生物・見方をかえたら・5
破傷風菌
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.675
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901436
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破傷風という病気は,昔から大変死亡率の高い感染症として恐れられてきました.現在はジフテリアと同じく予防接種によってほぼ完全に制圧されています.破傷風は破傷風菌が作る毒素によって起こされます.この毒素は神経を冒し,筋肉の痙攣を起こすことにより呼吸ができなくなったりして患者は死んでしまいます.
破傷風菌は,土壌細菌とよばれているものの一種で,環境の条件が悪くなると芽胞というかたちになって環境条件の好転までじっとしています.また嫌気性菌とよばれるように酸素があると増殖できないという特徴もあります.いずれにしてもこれらの性質は感染症の原因菌にはふさわしくないようです.動物の糞便中からもよく検出されますが,このままで破傷風という病気を起こすことはありません.また自然界で破傷風菌が検出される割には,破傷風という病気は少ないのです.動物園の熊にひっかかれて破傷風にかかったという話がありますが,これは爪の間に入っている糞便や破傷風菌のことを考えるとよく理解できます.
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