実態をさぐる
性病—このひそかな悪魔の胎頭
pp.62-63
発行日 1966年5月10日
Published Date 1966/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203650
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「性病実に23万,一説によると500万」と厚生大臣が国会壇上で説明したことは,大きく世人の耳目をあつめた。もっともこの傾向は,公衆衛生や医療にたずさわる人たちが,以前から心配してきたことではあったが,改めて重大な問題だと認識されたのであった。しかも"国民衛生の動向(昭和40年版)」では,昭和39年届出患者数はわずか,5,326名にすぎない。もともと秘とくしがちなこの種の疾病だかち,その実態は確実なものとはいえないにしても,あまりにも開きの多い数字ではある。
流行語でいえば"深く静かに潜行"した性病は,昭和33年4月制定された売春禁止法の効果からか,一時まったく影をひそめたかにみえた。しかし,昭和35年ごろから,皮膚科・泌尿器科関係の学会や雑誌に,ふたたび顕性梅毒症の報告があらわれるようになった。昭和36年,九大皆見名誉教授は梅毒の再出現を予告し,それ以後各地で報告例が相ついだ。この理由は,若い世代のものが性病に関してまったく無知であることと,混乱した世相を反映した無軌道な性関係,そして単なる取締りに終わった売春禁止法の限界などに帰せちれるものであろう。
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