特集 発表能力を育む教育の実践
思考を深め表現能力を高めるゼミ―北里大学における入魂の模擬裁判
奧野 善彦
1
1北里大学
pp.269-279
発行日 1991年5月25日
Published Date 1991/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900206
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プロローグ
平成2年12月8日(土)午後1時,北里大学302号の大教室に東京高等裁判所で拝借してきた法服を着用した3人の学生による裁判官が,傍聴する学生たちに見守られ入廷してきた.裁判官は,一礼して着席.『被告人,前に来なさい』裁判長の呼びかけで模擬裁判が開廷した.京都で10年前起きた夫の嘱託により妻が夫を殺害,その妻を被告人とする安楽死事件の北里大学裁判所による事実上の再審である.
裁判長は,静かに被告人を見つめた.会場の学生たちの視線が全員自分に集中していることを確認して,裁判長は,リンと張りのある声で,「被告人,名前は」とゆっくりと問いただし始めた.そこには絶妙の間があり,呵吽の呼吸がある.
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