EXTRA LECTURE
偉大な統計学者,ナイチンゲール―衛生統計学に示した業績を見る
多尾 清子
1
1藍野学院短期大学
pp.116-122
発行日 1991年2月25日
Published Date 1991/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900174
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人間の健康に関する統計的情報,衛生統計学とは
現代の社会生活の中で,数字と全く無縁に暮らしている人はありません.野球のスコアーも,交通事故の「本日の死亡数」も,家計調査に表われた1か月の食費や住居費も,すべて統計数字です.これらの数字は,常に時間と場所とに結びついた,具体的でまた特定の使用目的のために作られたものです.このような統計数字のもつ意味を追究する学問として,人口統計学とか経済統計学などが挙げられますが,その中のひとつに衛生統計学があります.これとは別に,統計の理論技術を研究する数理統計学の分野があって,一般に統計学といえばこれを指しますが,ここで用いる方法論は主として確率論によるものです.
1662年に,ロンドンの商人グラント(1620-74)は,市民の死亡実態を観察して,それに影響を与える要因を分析し,これを数的に記述することを試みましたが,これこそ衛生統計学の黎明を告げる出来事でした.また,プロシャの牧師ジュスミルヒ(1707-67)は,当時流行した痘瘡をきっかけに病気全般について全市民の健康状態を研究し,大量観察から規則性が見出されることを認識して,衛生統計学の発展に貢献しました.
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