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はじめに
今、私たちが直面している未知のウイルスは、私たちに何を訴えているのだろうか。世界の人々は新型コロナウイルスの出現によって、生き方を変えざる得ない状況になったと言っても過言ではない。生き方というよりは生きるための価値観の再考かもしれない。
看護師をめざす学生にとっても看護という職業を選択したことの是非が自身に問われている。看護師という職業に就き、与えられた役割や責務を全うするといった満足感を求めている学生には影響がないかもしれないが、「なんとなく周囲の人に勧められて」や「手に職を付けたほうが将来安定するから」など、看護師という職業で得られる経済的な安定などが職業選択の要因となっていた学生にとって、新型コロナウイルスの出現は自分の職業選択の是非について考え直すきっかけになったのではないだろうか。
看護基礎教育にあたる私たちも同じである。新型コロナウイルスに対する警戒心や恐怖心が社会の人々の不安を募らせるなか、看護師になるにおいて学んでもらわなければいけないことは何か、そのためにはどのような方法を選択するのか、それぞれの学校が看護基礎教育で何を大切にしているのか、私たちの社会での役割をどのように考えているのかが問われていると感じる。
今の社会的状況は、学校の意向だけで教育方針が決定できるわけではなく、地域の状況や実習施設の意向が大きく影響してくる。大切なことは、制限された選択肢のなかで、どのようなプロセスと意思決定によって新型コロナウイルスへの対策を行ってきたかである。
イムス横浜国際看護専門学校(以下、当校)でも、苦悩を伴いこの数か月さまざまな意思決定を行ってきた。私たちの行ってきた意思決定が私たちの置かれていた状況下でベストであったかどうかは、現時点で判断することは難しい。
しかし今回この場で、これまでの意思決定における過程ではどのような苦悩があったのかを読者のみなさんと共有することで、今後のよりよい判断を行う材料としていただけるのであれば幸いである。
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