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はじめに
多くの看護系大学において,看護研究に関する講義はオムニバス形式で提供されている。オムニバス形式では,各担当教員が専門分野の研究紹介や得意とする研究方法を教授するという内容の講義が多く,多様な研究例や研究法を学生が学ぶことができるという長所がある半面,系統立てて研究のプロセスを学び,新たな知見へとたどり着く基礎力をつけることには重点を置きにくいかもしれない。
本学では,学部,修士課程,博士課程において,専任の教員が研究法の講義を行っている。そして,学位レベルに合わせながら,研究を実践していくために必要な知識と技術について系統的に教育している。一連の講義では「研究はどのように行われるのか」というプロセスを学び,もやもやとした疑問の中から問題点を明確化し,リサーチ・クエスションを立て,それを解決していく力を身につけていくことに主眼を置いている。学部の講義は筆者ら2名が担当しているが,学生に求めていることは「研究についての知識を身につける」だけではなく「研究的思考」を学ぶこと,つまりは研究法という方法論に基づいて思考するという「行為」を学ぶことである。そのため講義では,研究の実施に必要なプロセスに関連した演習を多く組み,最後は「発表」を体験するという形で締めくくっている。看護研究の専任教員をもつことは,ゆとりある大学だからこそできると思われるかもしれないが,現在の担当科目数は実習や大学院を含めて22科目である。専任教員が担当することにより,教育に対する責任がより明確となり,学生の到達度への関心を高めて,細やかな評価と迅速な講義内容の改善につなげることができる。看護研究法を専門に担当する教員は,新しい研究方法や分析方法に常にアンテナを張り,それを講義に取り込むことや,看護研究の学習方法の工夫により力を注ぐことが期待される。
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