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はじめに
臨地実習は看護学生が医療現場において学びを深める重要な機会であるが,さまざまなインシデント・アクシデントに遭遇する可能性があり,その後に大きな影響を来す恐れもある。看護教育機関,および臨地実習を受け入れる医療機関にとっては,これらの事例を把握して,教育側と臨床側,双方の協働により再発防止,未然防止を図ることは,医療安全推進と医療の質向上のためのみならず,効果的で患者と学生双方に安全な教育の実践に欠かせない。
厚生労働省より,2013(平成25)年5月7日付で,2014(平成26)年度の保健師助産師看護師国家試験出題基準が公表され,改定の概要として,「看護師国家試験出題基準では,【看護の統合と実践】の出題基準を作成した」とされた1)。改定された出題基準では,大項目「看護におけるマネジメント」のなかに,中項目「医療安全」が明記され,基本的な理解を問う範囲で,医療安全の内容が問われることになり,名実ともに,卒前の医療安全教育の充実が求められている2, 3)。
このような状況を鑑みて,本稿では日本医療機能評価機構のWebサイトに掲載されている医療事故情報収集等事業の公開データ検索4)を用いて,看護学生に関与した医療事故およびヒヤリ・ハット事例を抽出し,発生要因と再発防止対策,未然防止対策に関して,今後の指導に求められることを検討した。
本稿では,患者に影響の及ばなかった事例,もしくはタイムリーな介入により事故に至らなかった事例や状況をインシデント,患者に何らかの影響が及んだ事例をアクシデントと記載するが,日本医療機能評価機構の報告書のデータを紹介する際には,前者をヒヤリ・ハット,後者を医療事故という用語(報告書に記載されている用語)を用いる。
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