特集 移動介助技術の指導方法─ボディメカニクスを実践に活かす
手すりを使ったトイレ内の移乗動作のボディメカニクス
國澤 尚子
1
1医療生協さいたま 地域社会と健康研究所
pp.1108-1112
発行日 2013年12月25日
Published Date 2013/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102576
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見えないトイレ内の動作
日常生活のどのような場面においても,人の介助を必要とするのはつらいものである。特に排泄だけはトイレで自分でしたいと思うのはごく当然な願いである。そのため,看護師はトイレ動作が自立できるように援助することが期待される。しかし,トイレ内で手すりを使った動作や,車椅子使用者のトイレ介助をどのように行うべきか,明確な根拠をもって書かれた教科書・技術書は見当たらない。実は動作に支障のある人がトイレの中でどのような行動をとり,あるいは看護師や介護士がそれぞれどのような介助を行っているのかということも不明確である。
ベテランの看護師や介護士が行うトイレ介助の様子を見せてもらったことがある。ある看護師は患者に縦手すりを使って車いすから立ち上がってもらったあと,患者の身体を壁に押し付けるようにして立位を保持し,後方から下衣を脱がせていた。ある介護士は自分の膝を曲げて大腿部の上に座ってもらうようにしながら,オムツの着脱をしていた(写真1)。多くの経験を通して,介助者自身の体格や患者の状態に合わせた,最も安全で安楽な方法を習得したものと思われる。
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