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はじめに
看護師,介護福祉士,理学療法士は,ベッド上で身体を動かせない人,ベッドから車椅子に移乗できない人に対して,日常的に移動・移乗介助を行っている。そのときに,対象者の体型やその重量を考慮し,体が動かせるかどうか,立てるかどうか等対象者の状態を十分観察し判断して介助を行うことが重要である。従来,移乗介助時にボディメカニクスを考慮すれば,容易にできる,一人でできると考えられてきた。しかし,現実の介護・看護作業のなかでは,体位変換,移乗動作などは,看護師,介護福祉士にとって腰部に負担がかかり腰痛の要因となっている1)。
2013(平成25)年6月に腰痛予防対策指針の改訂がなされ,福祉・医療等における介護・看護作業のなかで,「移乗介助,入浴介助および排泄介助における対象者の抱え上げは,……原則として人力による人の抱え上げは行わせないこと」と提唱された2)。このように「一人で抱えない」ことが提唱されたことは,今後の介護・看護作業を行う場合の重要な基盤となり,体位変換や移乗動作の介助の際の技術教育に変革を与えるものである。医療現場で働く看護師だけでなく,福祉施設に働く介護福祉士への教育にも,一人で抱き上げないで,道具を活用し,かつボディメカニクスを活用した移乗動作介助の技術教育を検討していく必要がある。
ここでは,ベッド上での対象者の上方・水平移動の介助,ベッドから車椅子間の移乗介助を中心に,その方法の重要なポイントや具体的な方法について説明する。また,移乗介助は,まず対象者の状態をよく観察し,対象者の状態に応じた介助が必要となるため,その選択についても述べる。
看護師や介護福祉士の教育を行う場合にボディメカニクスだけでなく,以下に述べる具体的な方法のデモンストレーションを行い,演習に取り入れていくことが重要である。
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