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書評 ―『生涯人間発達論 第2版 人間への深い理解と愛情を育むために』―「人間が全体として発達していくこと」を読者が味わう書
柳原 清子
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1東海大学健康科学部看護学科
pp.145
発行日 2011年2月25日
Published Date 2011/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101685
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私は成人看護学概論の授業を担当していて,青年期にある学生たちに対して,「成人期」を説明するのに四苦八苦している。あるとき,グループワーク課題に,親世代へのインタヴューを通して成人後期の発達課題を整理せよ,を出した。人々の姿と共に「ミドルエイジクライシス」と呼ばれる様相が,グループで浮き彫りにされると期待したのだけれど,結果は,学生たちはさっさとありきたりの文語を箇条書きに並べていっただけだった。「待て,待て~い!君たちはインタヴューしてその人の話を聞いてきたのでしょ。その人の生き様をとらえずして,何をやっているの!」と活を入れた(つもりだった)。学生たちは「はあ~,生き様!?(何をオーバーなことを言って)」と場は一瞬にして白けた。
いま私は決意している。今度からは,「生涯人間発達論」で紹介されていたアガサ・クリスティ『春にして君を離れ』を読ませ,今一度「生涯にわたる人間の発達」という視点から見える,人間の奥深さと,その存在への敬意を学生たちに伝えなければ,と……。
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