第2特集 看護学生論文―入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
祖母が与えてくれた夢
土屋 梢
1
1岡山県立大学保健福祉学部看護学科
pp.696-697
発行日 2009年8月25日
Published Date 2009/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101267
- 有料閲覧
- 文献概要
私は家族や親戚に看護師がいるわけではなく,また私自身も怪我や病気をしたことがなかったので,看護師という存在を身近に感じたことはなく,看護師とは自分とは関わりのない,遠い世界の存在でした。そんな私が看護師を志すきっかけになったのが,中学生の時の祖母の死でした。
祖母は若い時から何度も病気に罹り,生死をさまよう手術を経験したこともあると聞きました。そんな祖母が癌を告知されたのです。しかも告知されたときには末期で,あと1年はもたないと言われました。当時私は,人が死ぬということについて深く考えたことはなかったし,身近な人の死もあまり経験したことがありませんでした。だから祖母の病気について聞かされても,どこか遠いことのように思えて仕方ありませんでした。離れて暮らしていた祖母は私たち家族と一緒に暮らすことになり,また最後はのんびり過ごしたいという祖母の思いを尊重し,母が探してきたのは延命目的ではないホスピス病棟でした。半年間入退院を繰り返した後,祖母は最後の入院をしました。その頃から日に日に弱っていく祖母を見て,もうすぐ居なくなってしまうことを感じました。最後に入院してから約2か月後に祖母は亡くなりました。しかし祖母は最期を迎える時は苦しむことなく,優しく微笑んでいるようでした。そしてその優しい微笑みがいかにも祖母らしく,祖母の生きてきた人生を象徴しているようでした。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.