連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・3
臨床と研究との「Share」をめざす―留学生活の終わりに振り返って
岸 利江子
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1イリノイ大学看護学研究科博士課程
pp.644-645
発行日 2009年7月25日
Published Date 2009/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101248
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●研究って「料理」かもしれない
看護学生にとって当面の目的は,看護師免許試験の突破や現場で使う看護技術の習得なので,「看護研究」の授業に興味をもって取り組んでもらうのが難しいといいます。モチベーションの低い学生を教えるのは教員にも苦痛です。また,学生の時期に限らず「研究」を避けたいナースはたくさんいるでしょう。香港の研究でも,理論や研究といったテーマは病院ナースの継続教育で「最も人気がなかった」そうです。
私もナースになりたての頃は日々の看護業務をこなすのに精一杯で,「興味ももてないし,大変そう」と,院内研究なんて,できればかかわりたくないと思っていました。その後,大学に所属していた頃も,研究の意義や魅力は正直なところよくわかりませんでした。余談ですが,“「研究」(research, study)と「勉強」は何が違う? 研究の「方法論」は何のため? 自分がやりたいようにやるのではいけないのかな?”という疑問もありました。ただ,振り返ると日本語訳からの誤解があったようで,英語圏で「research」や「theory」という単語は,アカデミック以外の場でも日本よりずっと日常的に使われているものでした。「ちょっと調べてみるね」というときに「research」を使い,“こういうことになるもんだ”と説明するときに「theory」を使うといった具合です。統計用語も同様でした。この6年間,研究について学んでみた結果,「人は考える葦である」というように,知識を求めることは人間の本能の1つなのだと感じるようになりました。
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