連載 先輩に学ぶ講義法・5
齋藤裕先生に聞いた「提示」
朝倉 真弓
1
1横浜市病院協会看護専門学校
pp.428-432
発行日 2009年5月25日
Published Date 2009/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101199
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私が今まで捉えていた「提示」
「提示」を辞典で調べると,「差し出して相手に示すこと」と載っている。さらに,「差し出す」の意味を調べると,「前へ出す,提出する,送り出す」とある。では,「指し示す」とはどのような違いがあるのだろうか。それを確認するために今まで私が気に止めていなかった「指し示す」という言葉の意味を考えた。すると,「指し示す」は,こちら側が表わし示すことであり,考えの向かうところに導くこと(指示)だ。私は,今まで「提示」を一方的に相手に「指し示す(指示)」ことと捉えていたため,「提示」という言葉をあまり好きではなかった。
例えば私は,『輸液療法を必要とする患者の看護』という単元の授業の中で,学生に電解質の値の持つ意味を理解してもらいたいと思い,検査データの正常値とそのデータのもつ意味を調べてくるという課題を提示したことがあった。また,毎回授業では,次の授業の資料を配布し,( )内を埋めてくるという課題の提示をしている。しかし,そのように課題を提示すると,学生は大きなため息をついたり,嫌な顔をしたりする。私は,そのような学生の反応を見ると,やらされている思いが強いのではないかと感じた。今思うと,この時学生が示したのは当たり前の反応である。この時の私の考えていた提示は,「差し出して相手に示すこと」ではなく,「一方的に相手に指し示すこと」であったため,学生は課題をやらされているように感じたのはないかと考えた。
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