連載 スクリーンに見るユースカルチャー・15
多すぎる選択肢
小池 高史
1
1横浜国立大学大学院教育学研究科
pp.895
発行日 2007年10月25日
Published Date 2007/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100788
- 有料閲覧
- 文献概要
舞台は日本のどこかの田舎。それもかなりの田舎である。そこは想像上の地だと思う。主な登場人物は,その村にある学校に通う子どもたちで,小中学生合わせて6人。転校生が1人来て,7人。主人公にとって,同年代の異性は1人しかいない。同年代がそもそも3人しかいない。そこでは彼女は自然に彼と惹かれ合い,友人たちを大切にする。小さい子の世話をする人が他にいないから,彼女が世話をする。村人たちはみんな知り合いで,道で会えば誰とも挨拶を交わす。
それではこの映画を都市で観る私たちはどうか,という問いは当然出てくるだろう。登場人物たちとは違い,多過ぎる選択肢のなかを生きている私たちはどうか,という問いである。私は確かにこの主人公とは全然違う生き方をしているが,もし自分が同じ環境にいたら同じように生きられるとも感じた(共感)。それが映画を観て感動することにもつながっている。そしてそれは,この映画が若い世代からの支持を得たマンガを原作にしていることから,多くの人に共有されることだと考えられる。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.