特集 KJ法の思想と技術を学ぶ
「渾沌をして語らしめよ」からの学び
中村 由子
1
,
原田 千鶴
2
1大分大学大学院医学系研究科
2大分大学医学部看護学科基礎看護学
pp.24-27
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100197
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
KJ法との出合い
私がKJ法に出合ったのは,修士課程で「中堅看護師のキャリア開発に関連する研究」注1)に取り組む過程であった。研究では,〈職場異動における中堅看護師の成長〉を明らかにしたいと考え,先行研究を検討した結果,「実態探求型」の研究デザインが妥当であると考え,中堅看護師の生の声をデータとして汲み上げていく質的研究方法を採用しようと考えた。しかし,研究初心者である私にとって,数々ある質的研究方法の技法は,手続きだけをみると類似していて,適当な方法論を選択できずに悩んだ。
そんなときに,研究活動や,現場の問題解決にKJ法で取り組んだ経験をもつ研究指導教官からKJ法の採用を示唆された。このころ私のもっていたKJ法の知識といえば,単なるラベルやカードを使った《まとめの技法》あるいは《分類の技法》といったものであった。川喜田二郎氏の主張されている,「独創的発想を促す技術」としてではなかった。だから,KJ法は,これまで書斎科学・実験科学の方法論でしか語られていなかった知の世界に,“現場の科学”あるいは“野外科学(フィールドワーク)”の方法論を導入した質的研究方法論であり,データをして,新たな意味を創り出すという“発想法”であることを聞いたり,「KJ法は現場まで行って取材したデータをまとめる野外科学であり,看護もまた野外科学である」という川喜田氏のインタビュー記事1)を読み,ますます関心をもった。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.