特別記事
—予防医学からグローバル健康科学への転換—21世紀の健康文明と地域保健・看護学の新しい展望について[3]—新しい健康文明の選択-21世紀のグローバル健康科学へ
松田 正己
1
1静岡県立大学看護学部・地域看護学
pp.1042-1048
発行日 1998年11月10日
Published Date 1998/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902927
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医科学の時代区分と健康文明の主体的な捉え方
DDT革命に端を発する20世紀後半の予防医学革命は,突然に生じたわけではなく,19世紀以前の経験的医学に19世紀後半からの医科学の発展が加わり,その長い蓄積の中から花咲いたものであった。DDT革命の最中,1956年に米国ノースカロライナ大学公衆衛生学部長のマクガブランは,このような医科学の発展を4期に分け整理している17)。すなわち,①19世紀前半を症状中心の経験的保健の時代,②19世紀後半を細菌・疾患中心の基礎科学の時代,③20世紀前半を患者中心の臨床科学の時代,④20世紀後半を地域中心の公衆衛生科学の時代,である。これまで筆者が,20世紀の健康文明の代表例と指摘している予防医学とは,このような19世紀から20世紀に至る医科学の蓄積の総体である。しかし,これまで述べてきたように,マクガブランの時代に大きな期待を持って迎え入れられた,DDT革命は幻想に終わった。このため,医科学の発展に関する時代区分のうち,第4期については,その後,修正がなされている。歴史の時代区分というのは,その時代に生きる人々の指針となる区分であり,医科学の歴史の場合も当然,時が経つにつれ修正が必要になる。
20世紀の後半も半ばが過ぎた1979年,このような医科学の時代区分に,WHOのバートンは,政策的保健の時代を追加した17)。
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