連載 家族を考える・1【新連載】
家族を診る
伴 信太郎
1
1川崎医科大学・総合臨床医学
pp.80-81
発行日 1995年1月10日
Published Date 1995/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902753
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週刊朝日('94, 8. 19-26)に,作家の吉行淳之介氏のことについて,長年氏とともに暮した宮城まり子氏が語った話が掲載されている。
吉行氏に肝臓癌が発見されたのは2年半前だったとのこと。その後本人には血管腫という病名で治療が続けられた。しかし,……。『がん告知されたのはたしか5月11日のことで,思ってもみないことでした。それまでの主治医の先生が3月に退職され,今度トップになられた先生が,「吉行さんは小説家であり,世の中のこともちゃんと知っているし,話します」と言われまして……。先生ががんっていわれた時,淳之介さんの顔色が,すーっと白くなりましてね。「シビアなことおっしゃいますなあ」って言いました。それでそのあと「君は知ってたのか」と聞くので,「わたし知らなかった。ごめんなさい」と言いました。だって,わたしまでだましてたってわかったらかわいそうでしょ。つらかったです。
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