特集 老いと向きあう
家族ぐるみの支援――老いと家族
渡辺 俊之
1
1渡辺医院
pp.32-36
発行日 2026年2月5日
Published Date 2026/2/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt52010032
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はじめに
よく行くスーパーで,おしゃれな60代くらいの女性と70代くらいのハンチング帽をかぶった紳士の仲睦まじいカップルを見かけるようになった。きっと私と彼らの買い物の周期が合っているのだろう。鮮魚売り場で一緒になった時,「ご夫婦,仲がいいですね」と話しかけてみると,紳士はニコっと笑顔になり「内縁なんです」と言った。時々会うと,どちらからともなく一言,二言話すだけの間柄になった。ところが,いつしかカップルの姿を見なくなった。1年近く私は二人のことを忘れていたのだが,2カ月前に男性が一人で惣菜コーナーにいるのを見かけたので声をかけた。ヨレヨレのジャンバー,手入れしていない白髪,以前の面影は微塵もなかった。「連れ合いの方はお留守番ですか」と言うと,男性の顔には悲しみが宿り,目を潤ませて首を横に振った。「あ,すみません。そうでしたか。また会いましょう」とその場から逃げるようにして,私は店を出た。帰りの車の中で寂しそうな男性の姿がよみがえり,目頭が熱くなり,やがて涙に変わった。
編集委員会からいただいた「家族ぐるみの支援」は難しいタイトルである。最近は「家族ぐるみ」という言葉を聞くことが少なくなったからだ。私が所帯を持った頃は「隣の家とは家族ぐるみで付き合っている」「息子の友人とは家族ぐるみの付き合いだ」とよく使っていたが,そういう時代ではなくなったのかもしれない。SNSが登場し家族メンバーはLINEやメールでの各個人の繋がりを求めているからであろう。しかしその一方で,家族LINEは家族の凝集性を高めてくれている。
本稿では「老い」を家族という文脈で考えてみたいと思う。

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