特集 「健康マイノりティ」への支援
保健現場が着目すべき“マイノリティ”とは
高鳥毛 敏雄
1
1大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座
pp.454-459
発行日 2002年6月10日
Published Date 2002/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902625
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「公衆衛生」が「地域保健」といい換えられ,地域の保健事業の主体が市町村に移行したことは,安定生活者に対する保健事業の総量を飛躍的に増加させることにつながった。その反面,複数の自治体にまたがる不安定就労・生活者に対する保健活動は,関心が薄くなってきたように思われる。母子保健事業,結核対策,老人保健事業に関わる仕事をしている保健師であれば,このような思いを持っている人が多いのではないかと思う。
結核は医師の届出が求められているため患者のすべてを知りうる疾患であるが,この結核を通してわが国の公衆衛生活動をみてきた身としては,結核が社会経済弱者に偏在する傾向が強まっている背景には,不安定就労・生活者に対するわが国の保健対策が弱体化していることが深く関係していると思っている。なぜこんな重症になるまで発見できなかったのか,どうしてもっと早く受診できなかったのか,保健サービスの利用はどうなっていたのか…。社会が豊かになり,自立的に生活できる人々が多くなってきている今日においても,自立的な健康づくりが困難な人々は多く存在しつづけている。
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